【第7回】キラキラおちょこガール
7回目となりました「キラキラおちょこガール」。
日本酒に携わる女性がきらきらと輝いている姿をお届けする企画。
毎月更新予定なので、ぜひご確認を!!
7人目のキラキラおちょこガールは創業1870年、飛騨古川にある「蓬莱」の銘柄で有名な渡辺酒造店 木元 茜さん。プライベートなことから仕事のことまで、彼女のキラキラを徹底取材!
――まず初めに、木元さんのおちょこガール歴を教えてください。
木元さん:入社して今年で2年目ですが、日本酒に関わりだしたのが1年半前ぐらいです。まだまだ短いですね(笑)
―現在の仕事に就くまでの経歴を教えてください。
木元さん:地元が隣の高山市で、名古屋の外国語学部がある大学に進学して、Uターン就職でこの企業に入りました。今は、営業部で飛騨に来る外国人観光客の方に向けて蔵見学・商品案内や海外営業・海外業務全般を行っています。
―もともと英語がお好きだったんですか?
木元さん:いや、実は英語はあんま得意じゃなかったんです(笑)海外に行っていろんな人とコミュニケーションを取りたくて、その手段として英語が一番良いかなと思って。大学では英語を専攻していたんですが、メインで勉強していたのは日本語教育という海外の人に日本語を教える勉強でした。留学から帰ってきて、就職活動を始めるときに地元企業も探してみようと思い、参加した企業展で渡辺酒造店を知りました。企業展にはアメリカ人の蔵人(コディー)もいて、“なんでアメリカ人が地元の企業にいるんだろう?”と思い、話を聞いてみたら「今は渡辺酒造店で働いていて海外にお酒を売ろうと頑張っている。」って。さらに、海外進出できる人材を探していると言っていたので「あ、これはもうぴったりじゃん!」と思って。地元で働きたいって気持ちもあったので入社しました。
―運命の出会いですね!
―留学はどちらへ行かれたんですか?
木元さん:留学っていうかインターンシップみたいな感じで、インドネシアに半年間、カナダに2ヶ月間行って日本語学校のお手伝いをしていました。
―結構長いですね。やっぱり、日本食は恋しくなりましたか?
木元さん:めちゃくちゃ!(笑)
留学前も何回かインドネシアには行っていたんですが、やっぱ短期でも“住む”となると全然違うなと。宗教的にお酒が呑めない国だったので…それが一番辛かったです(笑)
ビールも都会のスーパーの一番地下の端っこにちょっと置いてあるだけで、買うにも厳重にゲートが張られていて、20歳以上を証明して専用のレジじゃないと買えなくって…。
さらに、私の住んでいたところはインドネシア人と共有の冷蔵庫で、そこにビールを入れておくのもちょっと抵抗があって・・・でもインドネシア人の友達が「私たちはお酒呑まないけど、茜が呑みたいならつれていくよ!」ってたまに外国人観光客向けのバーとかに連れていってもらいました(笑)
―お酒を呑むのも一苦労ですね!
―では、続いてプライベートな質問を。休日は何をされていますか?
木元さん:一日だらだらするときもあるけど、基本じっとしていられないタイプなんです。なので名古屋や東京などにいる友達に会いに毎週いろんな場所に行っています。
―アクティブですね!ご友人の方々も日本酒を呑まれるんですか。
木元さん:私の友達はみんな呑みます!(笑)
私が働くのをきっかけに、じゃあちょっと教えてよって感じで呑むようになった子もいるんですけど、もともと好きな子もいます!割とみんなで呑みに行くと結構日本酒呑もうってなったりしますね。
―日本酒好きは日本酒好きを呼ぶ ですね!
木元さん:そうかもしれない!(笑)
あんまり呑めない子にも「こういうのだったら呑めるよ」ってお酒を勧めると、それで美味しかった!って言ってくれて、さらにその子が友達にも広めてくれて。他にも地元の友達で東京とか名古屋で働いている子が「自分の地元のお酒だよ」って蓬莱を紹介してくれていて。
友達同士でみんなが日本酒を広げてくれるので、ありがたい!代わりに営業してくれてありがと!って思っています(笑)
地元にいない友達も地元を応援したいからって、蓬莱に興味を持ってくれたり「結婚式で使うわ!」って言ってくれたり。そういういろんなことが“日本酒を呑む(知る)きっかけ”になって良いな、と思います。
―木元さん自身はどんなシーンで呑むのが好きですか?
木元さん:一番好きなのはやっぱり家族と呑むこと!学生時代はビールばっかり呑んでいて、家族もお正月やお盆とか特別なとき以外は日本酒を呑むことがあまりなかったんです。でも、渡辺酒造店で働くようになってからは親も日本酒に興味持ってくれて、私が新しいお酒出たよ~て買ってくると特別なことが無くても家族で日本酒呑むんです。それがすごい楽しいな~って。あと家だとすぐ寝れるので(笑)外で日本酒を呑むときは気を張っていて結構酔っちゃうんですよね。でも家だと気兼ねなく呑めるので、やっぱ家で呑むのが一番いいなって思ってます。
あと実家に住んではいるのですが、土日出張とか平日ばたばたしているとなかなかゆっくりする時間がなくて。でも、日本酒を呑むときは団らんの時間が出来るので、そのきっかけを作ってくれたのは良かったなあと。
―素敵ですね!ご両親は結構呑まれるんですか?
木元さん:呑みます!めちゃくちゃ呑む、大変!(笑)親も好きだし、自分も好きだからお酒の会社でよかったなと思います。
―天職ですね(笑) ちなみに、渡辺酒造店の中で好きなお酒は?
木元さん:一番・・・季節によるんですが、夏だと氷を入れて呑む「ガリガリ氷原酒」が大好きで、年がら年中好きなのはやっぱり、「蓬莱 純米吟醸 家伝手造り」ですね。ここに勤めることになって最初に呑んだのが純米吟醸で、それで日本酒美味しいじゃん!て思って。最初の印象大事ですよね。日本酒を呑んだのは初めてではないですけど、ちゃんと銘柄を知って、ちゃんと買って呑んだのは初めてだったので。
―では、お仕事についてお聞きします。御社のブログを拝見させていただいたのですが、お一人でアメリカへ出張されてましたよね!?
木元さん:行きました!ちょうど入社して半年のときに。もともとコディーが行く予定だったんですけど、他の仕事が入ってしまったので「木元、お前海外行きたいって言っとったやろ」みたいな感じで(笑)
入社した時に海外の仕事がしたいと言ってたので断る理由も無く、まあ断るつもりもなかったんですけど(笑)。それで、1週間前に決まって。ビザとかもギリギリですぐ旅行会社に電話して、何とか間に合いました。
―すごい急ですね!あちらではどんなことをされたのですか?
木元さん:アメリカでは、飲食店や酒販店の方向けの商談会と一般の方向けのイベントに参加しました。試飲をすすめたり、お酒に興味のある方や日本酒を取り扱いたい方に蓬莱を紹介しました。
―海外で日本酒は人気ですか?
木元さん:海外では、日本酒は日本食レストランで呑まれることがほとんどで、日常的に呑む方はまだまだ少ないと思います。それでも、年々人気が高まって、日本酒を呑む人や日本酒を学ぶ人も増えてきているように感じます。
イメージだと、日本でいう紹興酒みたいな感じだと思います。私たちも中国料理を食べるときぐらいしか紹興酒を目にしないじゃないですか。
―たしかに紹興酒って普段呑まない!もっと日本酒が身近なお酒として広まるといいですね。
木元さん:そうですね!もっと日本食がカジュアルな存在になったら、一緒に日本酒も広げていけるかなーと思っています。
―続きまして、外国人の方向けの酒蔵見学ツアーについてお伺いします。運営する際に気を使っていることはありますか?
木元さん:そうですね・・・たとえば、酒造りの工程を一から見学したいという方もいれば、とにかく試飲してみたいという方、日本酒を買いたいからラベルの見方をレクチャーして欲しいという方など、いろんな方がいらっしゃいます。なので、お客様が望んでいることを、臨機応変に対応するように心掛けています。
―酒蔵見学にいらっしゃる海外の方々で、国や地域によってお酒の好みの特徴はありますか?
木元さん:今、酒蔵見学にいらっしゃるのは欧米の方がほとんどで、お出しする呑み比べの中での一番人気は"純米大吟醸"ですね。うちだと「色おとこ」っていう純米大吟醸の商品があるんですけど、結構どの国の方も一番美味しかったと言われます。やっぱり香りが良いお酒とさらっとしたタイプのお酒が皆さんお好きみたいで。あと、ラベルデザインで選ばれるのもあるかな。
―色おとこ!ラベルすごく面白いですよね!
木元さん:あのラベルデザインを見てよけい記憶にも残るので、これが一番って言われる方が多いなと(笑)
あと、純米吟醸、吟醸などをお出しするんですけど、やっぱりアルコール添加しているものより純米がいいって方が多いです。
―それはお酒の説明をしてから呑んでもらっているのですか?
木元さん:“純米吟醸”と“吟醸”の違いは説明はしています。アルコールを添加するのはあくまで香りを調整するためであって、これも1つの酒造りの技術だと説明するんですけど、やっぱり純米好きの方が多いなって印象です。
ただ、今は全部同じ温度でお出ししてるので、熱燗で出したらまた違う感想があるかもしれないですよね。あと、どんな料理に合わせるのが良いかと質問されることが多いので、料理によって合うお酒を紹介できるといいなって思うんですが、まだそこまで出来ていないので。いつか料理とコラボレーションした酒蔵見学・・・っていうか体験として提供できるようになったら面白いな、と思います。
―料理とコラボレーション、素敵です!蔵でやっているところってあまりないですよね。
木元さん:あまりないですねー!高山や飛騨ってお酒のイベントとかティスティングコーナーとか結構やってたりするんですけど、酒蔵主体でそこまでやってるところってほとんど無いなと思って。でも、食と地元の酒って興味持たれる方多いと思うので攻めていきたいですね。
あと、いつかやりたいと思ってるのは、実際に酒造りができる体験です。蔵に1日あわよくば1泊2日で泊まりこんで夜中も麹の様子見る体験を、1カ月に何組か限定でやってみたいなって。自分も参加したいし(笑) いつか…どんどん大きく、パワーアップしていけたらなって思います!
―それは是非体験してみたい!
―酒蔵見学ツアーではどういった点に喜ばれるお客様が多いでしょうか。
木元さん:一番リアクションが良いのは、タンクの中で日本酒がぶくぶくと発酵しているのを見た時ですね。お~!って(笑)。時間によっては蒸し米の作業の様子とか、麹室で麹を食べていただく実体験とか。そもそもお米を削るとは??って海外のお客様は疑問に思われるので、実際にお米を見て触っていただくとすごく反応が良いです。あと、うちの蔵特有なんですが、お笑いパワー発酵っていって、タンクに吉本新喜劇のお笑いを24時間365日聞かせていまして。その話は一番ウケますね。最初お客さんは何が流れているのか分かってなくて、ラジオかテレビが流れてるの?って聞かれるんですが、「これは日本の吉本新喜劇って有名なコメディアンの音声で、お酒に聞かせてるんですよ~」って言うと、もう沸きます(笑)マジ~??みたいな。もう、これで、つかみはOKって感じですね(笑)。
クラシックなどの音楽を流してるのは他の蔵でも聞いたことありますけど、お笑いを流してるのはうちしかないので、皆さん記憶に残るみたい。たまに他の蔵とか行かれる方もいらっしゃるんですけど、うちはもうお笑いを流してたところを覚えてもらえれば(笑)
―絶対忘れられないですよ(笑)
―では続きまして、今までの仕事の中で、一番喜びややりがいを感じたことを教えてください。
木元さん:入社していきなり任せられた仕事が外国人向けの有料酒蔵見学ツアーの立ち上げだったんです。どれくらいお金をいただいて良いか分からないし、海外の方向けの有料蔵見学のモデルケースも他になかったので、私とコディーの2人でどう進めていこうかってところから始まりました。それで、去年の9月にようやく形になって、基本的にコディーが蔵の案内を、私が運営を担当することになりました。そうしたら、アメリカ人の蔵人に案内して欲しい!といってコディ―を目当てに調べて来てくださるお客様が多くなって!
でも、たまたまコディ―が居ない時に、私が代理でやったんです。お客さんからは、「コディーに案内してほしい」って事前に言われていて・・・だから、私がコディーの代わりができるのかなって、すごいプレッシャーで不安でたまらなかったんですけど、ツアーが終わった時にお客様が「楽しかった~!」とか「ナイスツアー!」って皆さんが拍手をしてくださったんです。その時、すごい嬉しくて。コディーはお酒を造っているし英語もネイティブだけど、私は酒造りの知識も勉強の身で、かつ私の説明で楽しんでもらえるかな?という不安もあり、すごく怖かったです。でも説明が難しい麹や酒母のところは写真や映像を作って見せるとか、ちょっとしたことでも自分なりの色を付けて案内ができたので、頑張ってよかったなって。何よりお客様に喜んでいただけたことが自信に繋がりました。
―それは私たちも聞いてみたいです!
木元さん:日本人向けにもそういうことができたら面白いなと思います。無料の簡単な蔵見学ツアーはやってるんですけど、杜氏のレクチャー付きで試飲ができる体験とか、・・・お酒を売るだけじゃなくて酒蔵でしかできない体験っていうか “酒蔵の付加価値”みたいなのをどんどん作っていくのが自分の仕事なのかなと最近思って、頑張りたいなと思っています!
―では、最後に。木元さんにとって日本酒とは?
木元さん:いろんな“きっかけ”になっているものです。家族と話すきっかけになったり、一緒に呑んだ人とすごく仲良くなれたり。いろんな人と繋がるきっかけになったもので、これからもつながっていくのかなと。
店頭や酒蔵見学にいらっしゃった海外のお客様から、「次は私たちの国に遊びにきてよ!」と言ってもらえて、じゃあ日本酒をもってそっちに行くから一緒に呑もうよ!って話をよくします。既に、行きたい国が何か国もあって、実際に行こうと計画してます。とっても幸せなことですね。これも日本酒によってつながった効果かなと。
―地元から世界へ、日本酒を広く発信し続ける茜さん。取材でお伺いした海外業務は、お酒と海外を愛するアクティブな彼女だからこそできることばかり。日本酒が国境を越えていくために奮闘し続ける彼女の姿は、同世代の女性に挑戦する楽しさを教えてくれているように感じました。本日は貴重なお時間をいただきありがとうございました。