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【第18回】キラキラおちょこガール

  • 7月8日
  • 読了時間: 12分

更新日:7月29日

18回目 となりました「キラキラおちょこガール」。

日本酒に携わる女性がきらきらと輝いている姿をお届けする企画。

キラキラおちょこガール_「蔵cafe 一合」柴田梨絵さん
キラキラおちょこガール_「蔵cafe 一合」柴田梨絵さん

18人目のキラキラおちょこガールは、愛知県岡崎市にある柴田酒造場が運営するカフェ「蔵cafe 一合」で料理人を務める柴田梨絵さん。プライベートなことから仕事のことまで、彼女のキラキラを徹底取材!


―まず初めに、梨絵さんのおちょこガール歴を教えてください。

梨絵さん:酒蔵で生まれ育っているので3、4歳のころからですかね。母が蔵人の朝ご飯を作っていたので横で見ていたり、小学生になるとパートの方と一緒に酒瓶を包む作業をしたり・・・何かしら蔵にいましたね。

―続いて、お店を始めるきっかけを教えてください。

梨絵さん:姉夫婦がカフェを開いたことがきっかけでした。当時はコロナ真っ只中で、お酒の売上が半減してしまったんです。そこで、姉夫婦がこの場所に人流を作って、お酒がもっと広がるようにしたいと思い立って、2020年にカフェを開きました。最初は2か月間の土日限定営業で、カフェもDIYで作ったような感じだったんですけど、コロナ禍にも関わらず1日300名ぐらいのお客さんに来ていただいたんです。

―300人ですか!すごいですね!

梨絵さん:その時はケーキとコーヒーのみの提供だったんですけど、毎週たくさんのお客さんが来てくれて。ここに人が来て、自然を楽しんで、たまにお酒を買ってくださって。うちにとって必要なことだねって話になったんです。それで、翌年からランチを出すようなカフェにすることになって、そのタイミングで私も参加したんです。ちょうどカフェの責任者を探してて・・・そういった経験があったわけではないんですが、飲食店でのアルバイト経験があったので。

―そういう経緯だったんですね。アルバイトはどのような飲食店さんでされていたんですか。

梨絵さん:日本酒とは全然関係ないですが、バルで4年ほどキッチンのバイトをしていました。日本酒はいずれ呑むだろうし、好きになると思っていたので、最初は日本酒と関係ないジャンルを知っておこうと思い バルで働かせてもらいました。

―バルって豊富なメニューがあって大変そうですね!

梨絵さん:そうですね、前菜から始まり、揚げ物やパスタとか・・・いろいろ経験させてもらいました。創作系のお店だったので、食材の合わせ方を知ることができてとても面白かったです。

―大学時代はどんなことをされていたんですか。

梨絵さん:大学は食品系で、食物栄養学科を専攻していました。何か資格がほしくて、看護師、薬剤師、栄養士・・・などの中から考えると「栄養士」がいいなと思ったんです。食べることは一生のことなので、何かしらの形で食と関わることができるかなと思って。あとは単純に食べることが大好きなので(笑)

―同じくです(笑)大学卒業後はすぐ蔵に入られたんですか。

梨絵さん:いえ、食品会社に就職して6年ほど勤めていました。病院や老人ホーム向けに流動食の営業をしていて、当時は静岡に住んでいたんですが、担当エリアが広くて。榛原郡や焼津、御殿場や伊豆や下田とか・・・

―かなり広範囲ですね!?

梨絵さん:おかげで運転が上手くなりました(笑)静岡に詳しくなったので、なんでも聞いてください!

―頼もしい(笑)6年間ずっと静岡だったんですか。

梨絵さん:最後の2年ほどは名古屋で食育活動をやっていました。小中学校や老人ホームへ行って、牛乳を飲んだらどんな風に健康になるかを説明したり、牛乳やチョコレートのつくり方を紹介したりして、会社の社会貢献活動を担当していました。途中からコロナであまり現地へ行って活動ができなくなってしまいましたけどね。

―長く勤められたんですね。そこをやめるとなると結構な一大決心ですよね。

梨絵さん:そうですね。当初は姉夫婦が何かやり始めたな、楽しそうだなって思っていて。料理人にと声をかけてくれた時は本当に迷いました。長く勤めてきましたし、会社員をやめるのはなぁ・・・って半年くらい悩んで。それでも、やっぱりこの人たちと一緒に何かを進めていくことが楽しそうって思ったんです。姉夫婦が土台をつくり上げてくれて、それこそカフェを作ったときも、父母にいろいろ言われながらも突き進んでいってくれたので。彼らと一緒にやりたいという気持ちが強くなったことがきっかけですね。

それに、飲食店をやることにずっと興味はあって。私にも何かできることがあるかもしれない、と思って入りました。小さいころから何か蔵に関わっていきたいという気持ちはあったんですが、なかなかタイミングが無かったので・・・姉夫婦がそのポストを用意してくれたんです。

―タイミングがまさに“呼ばれた”って感じですね!


―カフェのメニューは日本酒に特化していないですが、あえてそのようにされているのでしょうか。

梨絵さん:そうですね。酒蔵を推しすぎると来てくれる方も限られてしまうけど、カフェならだれでも気軽に来れるし、知識がなくても入りやすいので。でも、一歩入ってみると酒粕とか甘酒とか、メニューの至る所に“発酵”を詰めこんだメニューにしています。それこそ酒粕をつかったハンバーガーとか。

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―ハンバーガー!気になっていたんです。あまり日本酒と合わせるイメージがないですが、なぜメニュー化したんですか。

梨絵さん:とにかく若い人に来てほしかったのと、カジュアルに楽しんでほしいという思いがあったからです。あと、姉夫婦がアメリカに住んでいた経験もあって、アメリカの田舎町のカフェやハンバーガーショップのような雰囲気を再現したいと思ったんです。それにハンバーガーはいろいろなソースを合わせることができるので!

―なるほど、実際日本酒とのマリアージュはいかがですか?

梨絵さん:意外と合います!特にうちのお酒って味わいが奥深いタイプも結構あるので、肉との相性も良いんです。あと、発酵食品を混ぜることによって出るコクは日本酒と合う気がします。

―メニューは梨絵さんが考案されているのでしょうか。

梨絵さん:はい、蔵カフェが今年で5年目に差し掛かるんですけど、今は、パティシエの方と、発酵食品が大好きな方と、3人で考案しています。なので、今後メニューの内容が変わっていくかもしれないです。

―どんどん進化していくメニューが楽しみです!


―カフェやお酒のラベルに使われているロゴの意味を教えてください。

梨絵さん:このイラストは「親孝行」をあらわしているんですけど、「孝の司」は養老の泉の民話がもとになっているんです。『孝行息子が泉から湧き出るお酒を病弱な父親に呑ませたら病が治って、村中の人にも呑ませてみんなが幸せになった』という話で、このロゴのイラストも息子さんがお父さんにお酒を注ぐ様子をあらわしています。

―そういう意味だったんですね!

梨絵さん:イラストはうちの社長と、そのお友達の建築士の方が描いたものなんですが、喫茶店で話しながら思いつくままに描いたら出来上がったようで(笑)

―そんな誕生秘話があったとは(笑)

梨絵さん:そうなんです(笑)ちなみにカフェのロゴはお酒ではなくてコーヒーを持っているんですよ。あと、このロゴはお酒のラベルにもなっています。

―ラベルにも使われているんですね。かわいいですね!

梨絵さん:かわいいですよね。それとは別ですが、昨年から「孝の司」のラベルの字体が新しくなって、ゴシック体と明朝代を組み合わせたものに変わったんです。いいお米をつくってお酒を醸すこと、そして、全国的にも珍しい、うちの“超”軟水の湧き水にそぐうようなお酒をつくっていこう、という色々な覚悟を込めて、この字体になったんです。

なので、数年前から取り組んでいるんですが、休耕田(使われていない田んぼ)を復活させて田園風景を作るために、酒米を育てているんです。

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―お米づくりも自社でされているんですね!決意を込めたラベル、かっこいいです。あと“超”軟水にそぐうお酒っていうのが気になりまして。

梨絵さん:山の上に井戸があるんですけど、地名が「神水(かんずい)」といって、水道水の20倍ぐらい柔らかい水なんです。岡崎は花崗岩という固い石が有名で、その岩盤がここら辺にもあって。本来だと、雨が降って鉱物を経てミネラルたっぷりの水になるケースが多いんですが、石が固いのでさーっと通り過ぎて超軟水になるんです。岡崎の地形に影響を受けているんですよね。

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―地域の特徴でもあるんですね。

梨絵さん:そうなんです。お年寄りの方にも美味しく飲んでもらえる優しい水なんです。でも、お酒造りでは超軟水だとあまり発酵が進まないので、以前はカルシウムを添加してお酒造りをしてたんです。日本は軟水が多いのでカルシウムを添加して醸造する酒蔵さんは多いらしいのですが、せっかくなら超軟水を活かしたお酒にしたいという想いがあって。今はお米からミネラルを借りて技術的に発酵を進める造りにしています。

―味わいはどのように変化がありましたか?

梨絵さん:かなりフルーティーな味わいになったかな。うちのお酒は力強い味わいのものが多かったので、呑みなれている方には楽しんでいただけるんですが、初めて呑まれる方はちょっと「日本酒って難しそう」って感じてしまうこともあったんです。でも、今のお酒はそういった方にも楽しんでいただけると思います。実際に、カフェでお酒を呑んでそれを買っていかれるお客さんも増えたので。ほんとにありがたいです。

―新しいチャレンジですね!

梨絵さん:そうですね!何年かかかりますけど徐々に進んでいて…自分たちの田んぼでつくった夢山水(酒米)でお酒を醸すとか。単にお酒をつくって売る、ではなくて、「この地域がよくなるように」という思いや行動を、と考えていますね。

―ストーリーのあるお酒造りって素敵ですね。


―続いて、プライベートについて。趣味やハマっていることを教えてください。

梨絵さん:趣味ではないですが、呑むこと食べることは本当に好きですね(笑)最近はスパイスやハーブとか、アロマにハマっています。スパイシーなエスニック料理とクラフトジンを合わせると、香り×香りの相乗効果がすごくて、めちゃくちゃ美味しかったです!

―何それ!きになります!

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梨絵さん:インド料理屋さんで食べたビリヤニと、ジントニックの組み合わせが最高だったんです!

香りって脳に一番近いじゃないですか。パッと気分が変わったり、すごく癒されたり。気持ちを簡単に変化させることができるし、感動を得ることもできるので、とても気になっていますね。あと、それを日本酒でもできるんじゃないかなって思っています。単体でももちろん美味しいですけど、プラスして何か提案できるものがあるんじゃないかなって。

―日本酒×スパイスですか…あまり馴染みがないですね。

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梨絵さん:例えば、タイ料理×日本酒とか。実は最近ちょこちょこ出てきているんです。和食と相性がいいのはもちろんですが、いろんな組み合わせで間口を広げて、日本酒人口を増やしていきたいですね。

―いつかカフェでメニュー化される日がくるかも?

梨絵さん:やりたい、ほんとにやりたいですね!


―好きな日本酒、または日本酒のタイプがあれば教えてください。

梨絵さん:どれも美味しいからなぁ…でも最近は甘い日本酒が気になっています。那古野にある、焼酎や日本酒などのいろんな古酒を出してくれるバーで、日本酒の古酒をいただいたんです。その時に甘いお酒っていいなって思いました。醸造系のお酒って、食事がないと呑みづらいって固定概念があったんですが、それは単体でゆるゆると呑む感じがよくて。そういう楽しみ方もあるんだなって気づかされました。

―リキュールみたいな感じもあっていいですよね。

梨絵さん:そうですね!香りもいいし、熟成の過程で度数も落ちて呑みやすくて、深くてきれいな琥珀色で…とても高貴な気分になりました(笑)

―私も味わいたいです(笑)

―続いて、お店をしていて大変だったことはありますか

梨絵さん:加工も含めて、酒粕の扱いですね。どうやってみんなに楽しんでもらえるか、その課題が大変かな。そもそも酒粕が苦手な人が多くて、そういう方は高確率で「神社で昔飲んだ甘酒が苦手」って言われるんですよ。

―確かに苦手な方多いですよね。

梨絵さん:一度飲むと「こんなに美味しかったんだ」って言っていただけることが多いんですけど、そもそも口にされない方もいるので。まず一口食べてもらえるように、こっそりソースや料理に入れたりして、どうにか美味しいって言ってもらいたいと思ってます。発酵って健康にもいいし、ちょっと入れるだけで料理の格が上がるし。いいことがたくさんあるので。

―梨絵さんが一番すきな酒粕のメニューはなんですか?

梨絵さん:定番ですが、甘酒です。冬になると無性に飲みたくなりますね。酒粕の甘酒はDNAに刷り込まれいるのか、めちゃくちゃ好きです。癒されます。

―さすが酒蔵の娘さん(笑)柴田酒造場さんの甘酒はどんな感じなんですか?

梨絵さん:うちの母は甘すぎるものが苦手なので、砂糖はあまり入れないです。しっかりアルコールを飛ばして、あと少しだけ塩を入れます。分からない程度の微量ですけど、入れることによってボヤっとした甘みが引き締まるんですよね。あとは濃度もいろいろありますよね。うちはトロッとしています。

―いいですね~、冬が待ち遠しい。

―続いて、今後挑戦してみたいことはありますか。

梨絵さん:今まさに過渡期でして。酒粕とか麹とか、もっと発酵を楽しめるようにメニューを変えていきたいなと思っているんですけど、いろいろ作っているとなんかぼやけてしまうなって悩んでいる最中です。

もっと酒粕をメニューに詰め込みたいですね。先ずは何よりここに来てもらうことが大事で、この地域を楽しんでもらえるように、そして日本酒について知ってもらえるように。

カフェとして頑張ってきた数年間を活かして、次に進みたいです。なにか体験として持ち帰れるものや、発酵についてハードルなく学んでもらえるものとかを作りたいと思っています。

あと、ギフト関係も整えたいですね。この場所のお土産として目玉になるようなものを作っていきたいです。お酒でもいいですけど、呑めない方もいるので。そこはカフェの出番かなって思っています。まだ考案中ですけどね。

―確かに、ここまで来たら何か買って帰りたい!

梨絵さん:ですよね、ここでお土産を買っていただいて、人にプレゼントして喜んでもらえて、その人も発酵の力で体が良くなって、健康になって。こんなふうに広がる感じがいいな。

―では最後に、梨絵さんにとって日本酒とは

梨絵さん:そうですね・・・まずは人を繋ぐもの、美味しいものがより美味しくなるもの。あとは環境が知れるもの、でもあるかな。うちは山の奥にありますけど、地域柄でこういう味わいになるんだよ、というか。その土地に深く関わっている業界であると思います。地域を知ることができるものが日本酒かなと思います。

―誰もがほっとできるカフェの空間から、“発酵”という奥深い世界を楽しさとともに届ける梨絵さん。地域に寄り添いながら、丁寧に広げていくその営みに、静かな力強さを感じました。本日は貴重なお時間をいただき、本当にありがとうございました。

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