【第14回】キラキラおちょこガール
14回目となりました「キラキラおちょこガール」。
日本酒に携わる女性がきらきらと輝いている姿をお届けする企画。
14人目のキラキラおちょこガールは、天保6年創業 白木恒助商店の代表社員 白木滋里さん。プライベートなことから仕事のことまで、彼女のキラキラを徹底取材!
―まず初めに、白木さんのおちょこガール歴を教えてください。
白木さん:日本酒をのみ始めたのがハタチだから…今で31年かな。
―次に現在のお仕事に就くまでの経緯を教えてください。
白木さん:岐阜の大学に通っていたんですが、4年生の時に酒蔵を継ごうと決めました。姉と妹がいるんだけど、姉が継ぐかなと思ってたら結婚しちゃって、あれ?って。でも、お酒が大好きだったんで、結構軽い気持ちで継ごうって決めちゃいました。
―ちなみに大学はどんな学部だったんですか?
白木さん:教育学部だったんだけど、先生になりたいとかは無くて。その頃はどこでも就職できるような時代だったんで色々迷ったんだけど、古酒がいっぱいあるのに誰も継がなかったらこのお酒はどうなっちゃうんだろうって…まぁ、若いのであんまり考えずにやろっかな~って軽い気持ちでした(笑)
―すごい決断(笑)!卒業後はすぐに酒蔵に入られたんですか。
白木さん:卒業後は東京にある醸造試験場で3ヶ月講習を受けて、その後東京の大学の研究室で1年半ほどお世話になって帰ってきました。だから私、この酒蔵以外に務めたこと無いんですよね。だからダメ(笑)
―いやいや、継ぐ決心だけでもうすごいですよ!
白木さん:他の仕事もしておけば色々経験が積めたかなとも思うけど…まぁ、今そんなこと考えてもしょうがないから、結果オーライで良かったかな。それはそれで運命と言うか、それもいいんじゃないかなって思います。
―ご両親から酒蔵を継いでほしいという話はあったんですか。
白木さん:姉妹三人とも全然言われなかったね。多分ね、それが作戦だったんだと思います。
―押してダメなら…みたいな。
白木さん:そうそう(笑)人間ってさ、押されれば引くし。私も息子が二人いるんだけど、息子たちには一切言ってない。でも、私と主人が楽しそうに仕事してれば、親の背中を見て“ちょっとやってみたいな”と思う気持ちになってくれるかなと思うので、敢えて何も言ってはいません。
―確かに色々言われるよりも自分で考えるようになるかもしれないです。
―続いて趣味やハマっていることを教えてください。
白木さん:趣味は剣道です。今はコロナウイルスの関係であんまりできないんだけど、それが無かったら仕事が終わったあと週2~3ぐらい稽古してますね。多いときは週4日とか。
―週4日?!すごい頻度ですね!
白木さん:やりすぎよね~(笑)
―のめり込めるものがあるって羨ましい!剣道はいつからやられているんですか。
白木さん:高校3年間だけやってたんです。で、8年前くらいにもう一回始めたかな。
―再開されたきっかけは?
白木さん:息子が中学3年間剣道部に入ってたんですけど卒業とともに辞めちゃって、高校ではやらないって言ったので防具が余って…それがきっかけかな(笑)
―そこで再び剣道熱が!試合に出たりされるんですか。
白木さん:あるよ~。年に2,3回。すぐ負けますけど(笑)
―お仕事終わりのいいリフレッシュですね!
白木さん:そうなの、楽しいし!大人になってからの剣道って高校の時と違って…その~…だめだ、剣道の話をし始めたら何時間でも話せちゃう(笑)
―(笑) 剣道を通じて地域の方々との交流はありますか。
白木さん:そうね。剣道で出会った人は結構お酒買ってくれたりします。うちで加工(剣道風景・名入れラベル)ができる昇段祝いのボトルとか結構買ってくれるね。剣道も日本酒も日本の文化だし、そういう意味ではすごく共通するところがあるからね。
―新しいお客さんになったりするんですね!
白木さん:そうだね。思わぬところでビジネスチャンスを掴んじゃって(笑)でも、あんまり売り込むとやらしいからしないけど、やっぱ買ってくれるのはありがたいね!
―では、続いて仕事について伺います。なぜ古酒を造り始めたのか、きっかけを教えてください。
白木さん:私が3歳だった昭和46年からお酒を造っていて、父が酒蔵としての独自化・個性化を図るために何か無いかと探していた時、たまたま蔵の片隅で忘れられていた一升瓶を見つけたんですね。それを空けてみると綺麗な黄金色になっていて、呑んでみたらとてもまろやかだったので、それがきっかけで日本酒の熟成した古酒を造ることになりました。
というのも、大手メーカーさんにも小さな酒蔵にも「時間」は皆平等に与えられたもので、すぐに追いつくこともできないから…そういう経緯があって古酒をやってみようかってことになったと聞いてます。
―ご両親の手伝いをされていた時と、今と比べると仕事の印象は変わったりしましたか。
白木さん:ん~どうかな。手伝いをしてたときは、他人事じゃないけどそんなに深刻には考えてなかったかな。自分でやり始めると、お酒離れとかいろんな問題があることが分かったし、それこそ自分事になったし。あと、最近は従業員のみんなに色々任せるようになったかな。
うちの従業員は女性が8人いて、1人は社員さんであとはパートさんなのよ。みんなお子さんが小さかったりしたから、今までは自分で色々やっていたんだけど、これじゃあかんわって思うようになってね・・・ちょうど半年前に経営理念を決めたんだけど、今言ってもいい?
―ぜひお願いします!
白木さん:「私達はお客様を大切にし、自らを大切にし、お互いを大切にし、地域を大切にしながら強く優しい企業を目指して明るく前向きに進みます」
お客様も自分もお互いも大切だし、もちろん地域も。今年からお米も造り始めたんで、やっぱり地域にも可愛がってもらわないといかんで。あと、女性が多いので“優しさ”をいれたくて、強く優しい企業づくりにしました。
例えば子供が熱を出したとか、いろんなことがあるやんね。でも休みたいなと思っても無理に出てこなきゃいけないとか、そういう事がないようにしたい。綺麗ごとかもしれんけどね(笑)一日8時間とかいる場所だからそこが嫌だったら嫌やん。パートさんも社員さんも日曜日の夜に明日会社嫌だな~と思わないような会社にしたい。思っとるかもしれんけど(笑)
―素敵な経営理念ですね!
白木さん:あと、あんまり社員さんとかパートさんには怒らないかな。皆間違えたくて間違えたわけじゃないしさ。私も結構間違える。発注書が無い~とか(笑)間違いを怒ったり、分からないことを聞かれたときに「前に言ったじゃん」とか言ったりすると、次から聞きにくくなるし。それが頻繁になるとみんなが質問してくれんくなる。こう見えて結構気が弱いから、そういうのは言いたくないのよね(笑) いろんな人がいるけど、私はパートさんも社員さんもみんな大好き。社員が幸せじゃないと経営者としての幸せはないと思ってるから、そういう意味で私は恵まれているかな。
―トップの人がそういう考え方ができるって、とても素敵ですね。私も白木さんについていきたい(笑)
―店内のお酒の説明や紹介文は全部白木さんの手書きですか。
白木さん:そうね。私は手書きが好きなんだけど、酒屋さんとかでもPOPを手書きで書いたら売上は違ってくるんじゃないかと思うんだよね。やってみたらいいのにって思うけれど、あんまり皆やらないよね。書いたPOPをPDFにしてメールで送るから、印刷して切って貼ってもらうだけでもいいですよって言ってみたりもするけど、みんな中々やらないね~。こういう時代だからこそ、よりやってみたらいいのになって思う。
―手紙とかもそうですけど、人が書いた字ってなんかぐっときますよね。
白木さん:ね!私はたぶん、ものを書くことが好きなんよね。だるま通信(手書きで毎月発行されている通信)とかも15年ぐらい発行してるけど、やめられなくなっちゃった。
―15年も⁉すごい!私たちも読ませていただいてます、漫画(だるま通信に載っている4コマ漫画)も(笑)
白木さん:そうね~、みんな“だるまんが”しか読んでない(笑)
―通信が来るたびに皆で回して読んでおります!
白木さん:お恥ずかしい(笑)もうあの『どてっ』って言うオチがないとダメでね。
小さい娘さんを連れたお母さんがお店に来てくれた時に「娘が『どてっ』が好きで毎月楽しみにしてます!」って言ってくれたの。それまで3回ぐらいしか『どてっ』は使ってなかったんだけど、それからはすべてのオチに使おうと。おかげさまで最後のコマは考えなくても良くなりました(笑)
―『どてっ』にそんなほっこりエピソードがあったとは(笑)
―だるま通信やYOUTUBEなどのSNSで、いろんなことを配信されていますが、それを続けるパワーの源はどこからきているんですか。
白木さん:どこからなんだろ…。でもやっぱり発信しないと知ってもらえないので、続けるようにしてるかな。物を書いて文章にしたり動画を撮ったり…なんでもそうだけど、こんなこと書いて大丈夫かなとか思う必要は全くなくて、思ったことを正直に書くっていうね。
SNSっていろんな人と知り合えるし、直接会う機会があれば色々教えてもらったり、時には助けてもらったり、そういう繋がりを求めてるかな。あと、私の日常を知ってもらうことによって親近感がわくかもしれん。なんで覚えてるの!?って言うような人が滋里ちゃんって呼んでくれたりすると、すごく嬉しいんだよね。
―それはうれしいですね!
白木さん:人とのつながりが出来るし、知ってもらえるから発信をしたいなって。最近はツイッターも頑張ってて、この間酒粕のことをツイートしたらバズったりね(笑)
だから、私はお化粧して綺麗に撮るとかではなくて、ありのままでやってるね。
でも、それが楽なんだよね。どう見られたいかとかはあんまり考えてないかな。
―では今後の展望や目標を教えてください。
白木さん:今後は、いろんな人に蔵に来てほしいです。酒蔵見学を有料にしてるので、料金ごとにコースを作るとかね。例えば高いコースだと昭和46,7年のお酒を少しずつ飲めたり、ここでしか飲めないお酒をちゃんとしたグラスで飲んでもらったり、そういう感じかな。
あと、前に海外の展示会に出展したこともあったんだけど、やっぱり実際に蔵に来てほしいな~って思ってね。うちに来てくれた飲食店さんとかが自国へ帰って「こういう風だったよ」ってお客さんに説明してくれた方がきっと良いんじゃないかなって。
―実際にみて伝わるものって違いますよね。
白木さん:うん、だから私は地元で。今年から近くの田んぼにお米も造ってもらってるしね。今そのお米でお酒を造ってるんだけど、やっぱりお米が育つのをずっと見てたんでやりがいがあるね。明日はお米の生産者の人が酒蔵体験に来てくれるんだけど、自分の作ったお米が蒸されて、麹になっていく…っていうのは、若い農業者の人たちも初めて見るみたい。
そういうことって地域の活性化にもなると思うんだよね。
―では最後に。滋里さんにとって日本酒とは。
白木さん:笑顔にしてくれるもの、かな。自分が造ったときも呑んだ時も嬉しいので。みんなを笑顔に、自分も、周りの人も笑顔にしてくれる潤滑油かな。やっぱり一緒に呑む人が美味しいねって笑ってくれるのが一番。人間笑顔じゃないとね!
―商品を売ることだけでなく社員やその家族、地域の活性まで幅広い視野で考える滋里さんだからこそ、周りにたくさんの人が集まる理由が分かりました。私たちも短時間でもついていきたい!もっとお話ししたい…と感じました。本日は貴重なお時間をいただき、本当にありがとうございました。