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【第16回】キラキラおちょこガール

16回目となりました「キラキラおちょこガール」。

日本酒に携わる女性がきらきらと輝いている姿をお届けする企画。

 

16人目のキラキラおちょこガールは、岐阜県各務原市に蔵を構える「林本店」の五代目当主 林里栄子さん。プライベートなことから仕事のことまで、彼女のキラキラを徹底取材!

 

―まず初めに、林さんのおちょこガール歴を教えてください。

林さん:蔵元の娘なので、歴でいうと幼稚園の頃からですね…もちろん当時からお酒を飲んでいた訳ではないですが(笑)

―(笑)幼い頃から蔵を継ぐ思いがあったんですね。

林さん:私自身はあまり覚えていないのですが、卒園アルバムに「酒屋さんになる!」って書いてあったんです。まだ酒屋と酒蔵の区別もついていない頃ですが、意識はしていたのかな。

―続いて、学生時代から現在に至るまでの経歴を教えてください。

林さん:大学は東京農業大学の醸造科学科へ行きました。当時は卸業もやっていたので、卒業後はそのまま東京でキリンビールに入社して5年間営業職をしていました。その後に林本店へ戻ってきましたね。

―何かの記事で拝見したのですが、大学では特待生だったようですね!

林さん:学年の上位6名が特待生で、学費が半分免除になる制度だったんですが、たまたま1年目に張り出された順位表を見て「あれ…入ってるぞ?」って気づいたんです(笑)

―無意識に特待生…すごい!

林さん:とりあえず、真面目に出席して、真面目に勉強していたんです。親孝行にもなるし、学費免除分はお小遣いとしてもらえたし(笑) 卒業論文もワープロを買って、真面目に取り組んだら賞をいただいちゃいました!

―すごっ!優等生ですね!

林さん:いや、みんなね、真面目に勉強してなかったんですよ!ほんとに!

 

―続いて、趣味や最近ハマっていることを教えてください。

林さん:最近は近所の夜ヨガ教室に通っています。日々せっかちな生活をしているので、自分と向き合って、ゆったり、ゆっくりするための良い時間になっています。もちろん、ハードなヨガもありますけどね。

 

―どんなシーンでお酒を飲むことが好きですか。

林さん:今は娘が成人しているので、彼女と一緒に飲めることが一番の楽しみです。

娘は東京で仕事をしているので、私が東京に出張するときはよく会いにいって一緒に飲みます。娘は営業職なんですが、私と同じく誰かと一緒に飲むことが好きなので、もう、飲み会とかで毎日飲んでる(笑)

―お母さん似だ(笑)

林さん:かもしれないですね(笑) 私もひとりで飲むより、友人や得意先の方と一緒に楽しく飲むのが大好きなので。誘われるとすぐいきます!なので「今度また飲もうね」って言われると「いつにする?」ってすぐ手帳出して、次会う予定を立てちゃいます。また今度ってなると、チャンスを逃しちゃうこともあるし。なにより、年取ると図々しくなるんだよね!(笑) でも、そうやって繋がっていくご縁があるので、積極的なアクションって大事だと思っています。



―先ほど幼少期から蔵を継ぐと思っていたとおっしゃっていましたが、もし蔵を継いでいなかったら何をしたかったですか?

林さん:難しい質問ですね…考えたことないけど、やってみたかったのは“専業主婦”かな。ずっと外で代表としてやってきているけど、つらいなって感じることもあって。そういうときに専業主婦だったらな~って…

でもみんなには「そもそも似合わない」って言われます(笑)

―アクティブな故にじっとしていられなさそうですね(笑)

林さん:あとは、英語がもっと話せたら海外で仕事してみたいなと思いますね。

日本は海に囲まれていて、海外から見たら変わった国だと思うんです。だからこそ日本以外の国を知ることって大事だなって。海外は地続きの国が多いから、戦争や宗教問題とかがあって、いろいろと意識が違うんですよね。

でも、それもきっと、海外に得意先があるからこそ、そう思うんでしょうね。どこまで行ってもやっぱり“日本酒”というものが私のベースにあるのかな。

―切っても切り離せない関係ですね!海外にも得意先があるとのことですが、出張で行かれることもありますか。

林さん:あります。なので、どうしても英語でのコミュニケーションが必要でして。今更ながら英語の勉強をしております。

―オンラインとかですか?

林さん:大垣に英語の教室があるので月に2回ぐらい通って、3時間みっちり英語の勉強をしています。ほかの生徒さんたちは学生さんとか若い方が多くて、彼らに混ざりながら1つのお題についてディスカッションするんです。この前は「おすすめの株について」だったかな。

―ただでさえ英語なのに、お題がかなり難しいですね?!

林さん:そうなんですよ、ほんと心折れる…でも、海外の方ともっとコミュニケーションが取れるようになりたいので!

―すごいです!

 

―何かの記事で、急に「蔵を継げ」と言われたと見たんですが、本当ですか?

林さん:そうそう!それほんとです!ちょうど会議をしていたとき、終わりがけに父が「来週から社長な」ってみんなの前で唐突に発表したんです。みんなに「来週から何て呼べばいいですか?」って聞かれて、私も「いや、聞いてなかったんだけど…」って。そのくだりはよく覚えてます(笑) いつか継ぐと思っていたけど、まずは私に言ってよって。みんなの前で言われてしまったので、後に引けないですよね。

―本当にいきなりだったんですね!

―先代のころは卸業・酒販業がメインだったようですが、お酒造りにシフトチェンジしたのはなぜですか?

林さん:もともと日本酒の蔵なので、やっぱり原点に立ち戻って酒蔵としてお酒造りがしたいなって思ったのがきっかけです。あとは、女性でもできる仕事にしたいという思いもありました。卸業なので当時はトラックで自社配送をしていたけど、もしものときに私が運転してお酒を運ぶってことができないから。自分ができないことを人に、っていうのが引っかかって。なので、自社配達はいち早くやめました。今では社員も女性が多いし、女性の蔵人もいますよ。



―その改革を成し遂げたのがすごいですね!

林さん:でも、ずっと卸業をしていたから、長年の社員には日本酒造りに向かっていこうっていう思いをなかなか理解してもらえなくって…造りに関しても方向性がはっきりしていなかったので、蔵人もまるっと入れ替わったりと、いろいろ大変でした。

なので、当時はお酒造りの経験がないメンバーがほとんどで。そんなとき、たまたまご縁で秋田県の天寿酒造さんの元杜氏の佐藤さんにお手伝いいただけることになって、お酒造りをゼロから教えていただきました。7年近くご指導いただて、ちょうどコロナが明けて2年経ったくらいのタイミングで卒業されました。なので、うちはセクションごとにリーダーはいますが、杜氏はいないんです。

―林さんが継がれた後いろいろ変わっているんですね。百十郎ブランドもそのときに誕生したんですか。

林さん:そうですね。当時は「榮一」というブランドしかなかったので、それを持っていろんな酒屋さんを回りましたが「君はこの業界のことを全然わかっていない」って滾々と説教されちゃって。

それで、ちゃんとストーリー性があってバックボーンのある、かつ、自分の口でしっかり説明ができて、そして実在する。そんなブランドを立ち上げたいって思ったんです。そうすると「百十郎」しかない!と思って。

―桜の木を寄付された歌舞伎役者さんですよね。

林さん:そうです。各務原市を流れる新境川に1200本のソメイヨシノを寄贈してくださった方で、今でもシーズンになるとたくさんの花見客が桜並木をみに来ます。私は川沿いの中学校に通っていたので、小さい頃からその桜並木を見てきて。あの桜の木の下で楽しくお酒を飲んでもらいたいなって思いも込めて「百十郎」と名付けました。

そして、楽しく飲んでもらうために、私たちも楽しく造って楽しく伝えて。そんな風にお酒造りができたらなと思っています。





―大変なことがたくさんあったかと思いますが…蔵を継いでよかったことはありますか。

林さん:自分たちが造ったお酒をもっていろんな人に会う旅ができること、です。私の旅って“人に会いに行く”ことがベースにあるんですよ。例えば、2年くらい前に北海道へ行ったときは、1200キロかけて北海道各地にいる得意先に会いにいきました。

―めちゃくちゃアクティブですね!

林さん:運転はほとんど相方でしたけどね(笑) 札幌で香港の得意先に会って、旭川で得意先に会って、北見でJALの支店長に紹介してもらったワイナリーへ行って、十勝では得意先のママさんのところでお酒のイベントをさせてもらって…基本的に知り合いに会いに行くって感じですね。

―すごい過酷なスケジュール…

林さん:いえいえ、楽しいですよ!人に会うのが本当に好きだから。それに人はいつ死ぬか分からないから、会えるときに会おうって思っています。





―続いて、林本店の良さってどんなところですか。

林さん:明るいところ、お互いに思いやりをもって仕事ができるところ、かな。

うちはローテーションで休むので、今日やったことや伝えなきゃいけないことなど、申し送りができるように交換日記があるんです。あと、8年ぐらい前からずっとメッセンジャーを使っていて、今なにやってる、次なにやる、といった日々の業務報告をしています。

人と人とのいがみ合いって、コミュニケーションエラーから起きるものがほとんどなので、まずは文字を残すようにしています。ツールはなんであれ、伝える・伝わるってことが一番大事なことなんですよね。

できるだけそういったエラーを減らしていくのが私の役目かなって思っています。

―素敵な取り組みですね!

林さん:あとは、得意分野とか、個性に見合ったポジション作りをしてあげることを心がけています。苦手なことをさせないわけではなく、得意なことを伸ばしてあげるようにね。

動物占いを使うこともありますよ。

―動物占いですか?!懐かしい!

林さん:もちろん占いの全てが当てはまるわけじゃないけど、意外と参考になるんです。例えば、このタイプの人は心配性だけど、だからこそこつこつとした作業が得意だとか。その人の傾向を知るためのひとつの指標として使っています。


―今後チャレンジしたいことはありますか?

林さん:現在は無添加乳酸菌発酵製法で醸造しているんですが、あえて速醸で軽やかな“ハッピーオーラ満載”のお酒を造ってみたいなと思っています。とにかく楽しくてキラキラした、そんなお酒を出していきたいです。

色はパステルだったり、ビビットだったり。百十郎も明るい色使いはあるけれど辛口のイメージが強いので、あえて違う名前・ブランドにして、ハッピーオーラを前面に出してみるのもありかなと思ってます。

―まさに「ワクワク」ですね!

林さん:そうですね!「ワクワクを醸そう」は蔵のスローガンなので!

―お酒ができるのが楽しみです!



―では最後に林さんにとって日本酒とは

林さん:自分にとってはライフサイクルのひとつなので「生きがい」であり「楽しさ」でもあるかな。日本酒で話がふくらんだり、蔵元ってことで興味を持ってもらえたり、コミュニケーションの一番の武器でもありますね。

 

突然の社長就任という苦労を乗り越え、蔵の原点である日本酒造りに回帰し看板ブランド「百十郎」を立ち上げた林さん。「楽しくのんでもらうために、楽しく造って楽しく伝える」という言葉がとても印象的でした。その思いが周りを動かし、素晴らしい日本酒が生まれることを痛感しました。本日は貴重なお時間を頂き、本当にありがとうございました!




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